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十年前、稲荷神社の夏祭りで少女が亡くなった。
事故だった。以来、祭りは自粛されていた。
僕は十年ぶりに開催された夏祭りに来ていた。
しかし、気づけば人々の気配は消え、神社にたった一人になっている。
神社を彷徨っていると、屋台の前で盃を交わす男女に出会う。
「私たちも神社から出られないんです」───
どうやら僕たちは、神社に閉じ込められてしまったらしい。
そこで徐々に明らかになる、僕らと死んだ少女の接点。僕らは脱出できるのか。
少女の死は、本当に事故だったのか。
それぞれが持つ記憶の断片をつなぎ合わせていったとき、
僕らが知らなかった「あの子」の顔が浮かび上がった。
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